資料編(3) ─ 衛星通信テレメータによる地震波形データ流通の強化

地震研究所の定常観測点約100点のうち、無線テレメータや集中拠点局までの短距離の 専用線を利用している観測点等を除き、1997年度末までにほぼ9割の観測点で衛星回線 化が完了した。また大学間のデータ交換用地上回線は不要となり、同年末までに地上回 線による隣接間データ交換はすべて衛星化が完了した。

1997年秋からは東北奥羽山地合同地震観測も始まり、それ以降全国の大学高感度定常地 震観測点のほぼ全点(約300点)、一部の火山地震観測点、自治体関係の微小地震観測 点、それに管区気象台〜大学間のデータ交換による気象庁のほぼ全点のデータを含め、 約700観測点 ・2000チャネル分のデータが、衛星システムによって集配信されるようになった。 今や全国9大学24ヶ所の地域センター・観測所では、衛星送受信局とし て、この世界最大の地震テレメータ網からデータを自由に選択し、リアルタイムに研究 に利用できる。さらに新規に受信専用局を導入していくことにより、地震観測網をもた ない大学の研究者にもリアルタイム波形データの利用が可能になっている。このような データ流通システムは、従来の地上回線による隣接観測網間のデータ交換の枠組では想 像もできなかった画期的なものであり、もちろん世界で初めてである。

本衛星システムが利用しているのは、ディジタル衛星テレビ放送に使用されているのと 同じ民間通信衛星JCSAT-3号である。地震研究所では1997年度に、観測現場でのモニタ ーや地方大学の研究者によるデータ利用にも簡便に使用できる、 超小型衛星データ受信専用局 を開発した。衛星テレビ用の45cmパラボラアンテナと復調装置、ラップト ップパソコンからなる小型軽量かつ安価なものであるにもかかわらず、地域センター規 模の自動検測処理を行うこともできる画期的なシステムである。地震研究所では1999年 度より、衛星データの利用によるデータ流通の拡大を図るため、 共同利用によるこのシステムの貸出しを開始した。

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